2007年12月 第48回総会理事長報告

会議事報告
Ⅰ.第48回日本児童青年精神医学会総会における理事長年次報告
市川宏伸理事長より以下の理事長年次報告がなされ承認された。

理事長報告を行います前に、本学会会員の訃報についてご報告いたします。
松本征八会員と、上田吉一会員のご冥福を心よりお祈り申し上げます。黙祷
それでは、2007年の理事長報告をさせていただきます。

1.はじめに
昨年の第47回総会において、本城秀次、齋藤万比古、青木省三、飯田順三、井出 浩、近藤直司、白瀧貞昭、田中 究、傳田健三、西田寿美、西村良二、松田文雄、松本英夫、山崎 透、市川の15名が理事に選出され、私が理事長を務めることとなった。この1年間を総括して、今期の報告に替えさせていただきたい。

2.総会について
第47回総会は斉藤万比古会長(国立精神・神経センター国府台病院リハビリテーション部長)の下、千葉の幕張メッセ国際会場で、2006年10月18日~20日までの三日間開催された。総会では、「守ること、育むこと」をスローガンに会長講演、大林宣彦氏(映画監督)と牛島定信前理事長による二題の特別講演、「子どもの心の専門家を育てるために」、「強迫性障害をめぐって」、「ADHDの支援の仕方・支援の場」、「地域連携システムの可能性と問題点」、「反社会的問題を示す子ども達への支援」の五つのシンポジウムを柱に、14題の教育講演、4題の症例検討、約170題の一般演題が用意され、参加者も約1300名を数えて盛会に終わった。
第48回総会は山家 均会長(岩手県立南光病院長)のもと、本日より三日間の予定で開催される。第49回総会は松田文雄会長(広島松田病院長)のもと2008年11月5日~7日まで広島国際会議場で開催される予定である。第50回総会は門真一郎会長(京都市児童福祉センター)のもと、2009年9月30日~10月2日まで京都国際会議場で開催される予定である。京都総会は第50回の記念総会として開催することにしている。同時に学会誌の増刊号として50周年の記念誌の発行を予定しており、高木名誉会員に総編集を、本城、飯田理事に担当をお願いしている。会員各位に置かれても編集へのご協力をお願いしたい。

3.日常的な学会運営・活動について
1)学会員数の推移については、今年度の総会までの入会者は206名、退会者は67名で、差し引き139名の増加で、現在の学会員数は2996名である。本年度は名誉会員として、猪股丈二,山崎晃資、佐藤泰三会員を理事会として推挙し承認された。
2)各種委員会については、委員長からの報告があるが、全体的な流れについて触れてみる。
前理事長体制のもと、中央省庁との連携を密にし、学会として主張するべき点は主張し、協力するべき点は協力し、学会としての考えを直接的あるいは間接的に行政施策に反映するべく勤めてきた。平成17年度から始まった「子どものこころの専門医の養成に関する検討会」では、他の関連5学会(団体)とともに当学会も中心的役割を果たしてきた。本盛岡学会においても、厚生労働省の精神・障害保健課長に特別講演をお願いしているところである。
また、柳沢元成育医療センター総長を主任研究者とする厚生労働科学研究事業「子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究」に牛島前理事長が分担研究者として参加し、教育に関する委員会の協力を得て、人材養成の方策を模索している。この活動は、今後各学会と連携した「子どものこころの専門医の養成制度」の検討に関わることになると思われる。
当学会は「健やか親子21」事業の課題Ⅰの代表幹事を担っており、各学会(団体)との連携のもと、10才代の望まない妊娠や性感染症の背景にある、精神科的な心理的側面に焦点を当てて行く予定である。
明春から始まる発達障害者支援法の改訂などにも、学会として何らかの関与を行っていきたいと考えている。昨年度から特別支援教育については、当学会員が「専門家チーム」という形で協力しており、児童精神科医による司法鑑定への協力も学会として関与しているところである。
薬物治療についても、厚生労働省(医薬品機構)の求めに応じて、うつ病に対する青年期のSSRI・SNRIを中心とした随伴症状についての調査を行うところである。詳細については、委員会の報告を参照されたい。日本精神神経学会より、メチルフェニデートの「難治性うつ病」、「遷延性うつ病」の適応除外について見解を求められ、学会としても検討を行い、賛同することとした。今後も、児童青年精神医療の重要な治療手段の一つとして、利用者の立場を考えた薬物治療の一層の確立を目指すべきであると考えている。
他分野との連携とともに、児童青年精神医療の一層の専門性の向上も図るべきである。この分野の多くの疾患については、原因の究明が進められているところであるが、生物学的側面も含めて、様々な側面からのアプローチに、当学会もこれまで以上に関与していくべきであると考える。米国では昨年秋にブッシュ大統領が自閉症の原因究明に国家を挙げて取り組む法案に署名している。日本でも、今年度から脳科学の戦略的研究が始まり、1件4~5億円の研究費が用意されたが、当学会の関与する発達障害などのテーマは残念ながらその対象とはならなかった。当学会としても、学術的研究および実践活動に対してなんらかの顕彰制度を導入したいと考えている。医療経済委員会の齋藤理事を中心に、外来・入院における医療費の改定を要請していることも付記しなければならない。
これ以外にも、各種委員会が地道な活動を行っており、これらについては各種委員会の報告を参照されたい。

2007年12月
理事長 市川宏伸