学会基本理念

一般社団法人日本児童青年精神医学会は、「児童青年精神医学とその近接領域の向上発展のために、それらの研究を促進する」(定款第3条)ことを目的として1960年に創立され、その実現のため学術研究のみならず関連する諸領域の臨床と実践に係わる広範な現実的諸課題にも積極的に取り組んでまいりました。今日、国内外の児童青年期精神科医療ならびに近接領域の実践は拡大・発展を続け、多くの成果を結実させております。反面、近年の急速な医学研究の進歩と社会の変化によって、日々さまざまな新たな課題に直面しております。
一般社団法人日本児童青年精神医学会はこのような状況に鑑み、児童青年精神医学の向上と21世紀に生きるすべての子ども(児童および青年)の幸せを願って、ここに学会が進むべき基本理念を明示します。同時に、会員は常にこの基本理念を堅持すること、学会のすべての組織機構はこの理念の実現のために機能することを、宣言します。

  1. 会員は、全ての子どもを掛けがえのないパートナーとして、その尊厳と人権を尊重し、児童青年精神医学が保健・医療・福祉・教育・司法等の向上発展に寄与するよう、献身しなければならない
  2. 会員は、本学会がその学術的根拠を児童青年精神医学とその近接する学際的領域に広く求めることに留意し、高い科学的水準・関連諸領域との協力・公正な国際的視野に基づいて、契約関係にある子どもの最大の利益に反するような諸条件の変革に努力する責任を有する。
  3. 会員は、臨床・研究・教育ならびに社会的活動を行うに当たって、各々の所属する臨床専門分野に置ける科学的水準と専門的能力を維持すると共に、各分野が定める倫理的規範を遵守しなければならない。
  4. 会員は、市民として国内法を遵守すると共に、臨床・研究活動に従事するときは、国連による「児童の権利に関する条約」「障害者の権利宣言」を始めとする国際法を遵守せねばならない。既成の条文が有効でない新たな課題に対しては、関連学会、医師会、諸官庁など関連機関が発布する綱領・宣言・提言などを尊重し、それらの内容に齟齬が存在する場合は速やかに本学会に検討を求め、最も高い倫理的基準の普遍化に努力しなければならない。
  5. 会員は、契約関係にある子どもの権利、その家族の権利、同僚および他の専門職の権利を尊重しなければならない。
  6. 会員は、契約関係にある子どものケアに当たっては最大限の責任を負う。会員は守秘義務を遵守し、法の制約の下で契約関係にある子どものプライバシーを完全に保護しなければならない。
  7. 会員は、子どもが成長発達の途上にあることを深く自覚し、全ての子どもが最大の利益を自己決定するための最善の環境を準備しなければならない。とりわけ世界中の子どもが自然環境、社会価値、科学技術等の地球規模における変動の時代に生きている多難さを常に念頭において、個体差・個性の差異・ジェンダーの選択・国籍・人種などいかなる差異によっても公正さが侵害されることなく、子どもたちが多様に共生できる諸条件を整備する責務を有する。
  8. 会員は、全ての人の児童青年精神医学へのアクセスを支援し、児童青年精神医学とその近接領域に関する知識や情報を公表すると共に、地域社会の改善、メンタルヘルスの向上に寄与しなければならない。
  9. 会員は、学会を民主的に運営し、本理念等学会の定める規定を侵害しない限り全ての会員が完全な自由の下で活動できる条件を整備すると共に、相互に研鑽と点検を行う責務を負う。

付記.一般社団法人への変更に伴って平成25年9月8日に改正