2013.03.28 DSM5児童青年精神医学関連用語の翻訳案についてパブリックコメントNo.2

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<パブリックコメントNo.2

DSM5の児童青年精神医学関連用語の翻訳案について

児童青年精神医学用語検討委員会 委員長

松本英夫

 

2013214日に学会ホームページ上にDSM5の用語の翻訳案について1回目のパブリックコメントを求めました。その際の説明と重複しますが,改めて今回の一連の経緯を説明させて頂き,現時点での本学会案をお示しすると共に,学会員の先生方のご意見を求めたいと存じます。

20135月にDSM5が出されるにあたり,日本精神神経学会から用語の翻訳を統一したいとの意向が示され,学会内に精神科病名検討連絡会が発足しました。そして本学会に対して児童青年精神医学関連用語の翻訳依頼があったために,松本英夫が委員長となり臨時で児童青年精神医学用語検討委員会を立ち上げ,飯田順三,岡田 俊,田中 究,本城秀次,の各理事と齊藤卓弥評議員を委員として検討に入りました。

214日時点の翻訳案と解説はホームページ上に掲載されていますが,パブリックコメントとして3名の会員から意見が寄せられ,その焦点は「disorder」の訳にほぼ集中しており賛否は分かれていました。またパブリックコメントを求めると同時に日本小児精神神経学会にも翻訳案を送付し意見を求めましたが,回答は「disorder」の翻訳を変えることには賛否があるもののICDとの整合性などを考慮すべきで,現時点では慎重になるべきとのご意見が多かったようです。

その後,31日,16日に第1213回精神科病名検討連絡会が開催され,本学会案の「disorder」を「症」ないし「不全症」と訳す点に議論が集中しました。主な論点は,行政との病名の刷り合わせ,行政場面における当初想定される混乱,ICD11との整合性,本学会から提案した「不全症」という用語の適否,内科や外科など他の領域との整合性,などです。

これらに対して,当分の期間は病名を新旧併記する,今後DSM5ICD11codeが一致する予定である,訳語の最初に議論の経緯を含めた十分な断り書き(説明)を入れる,などの対応策が提案されました。

その上で,「障害」に対するユーザーの方々の拒否感が臨床場面で広く根強いこと,「症」は単なる症候群や症状であって障害者という意味を含まない広い概念である,ことなどが確認されました。

そして,「disorder」は訳すことができる箇所については「症」に統一する,という日本児童青年精神医学会と日本不安障害学会の案が連絡会の案として採用され,参加している各学会に持ち帰り議論して頂き,次回の426日の連絡会に各学会の意見を持ち寄ることになりました。

次回で一応の区切りとなるものの,もちろん最終的な決定ではなく,その後,日本精神神経学会理事会・評議員会に諮り,学会員へのパブリックコメントなどと議論が続いていくことになります。

 経緯の説明が長くなりましたが,用語の翻訳の解説を再度,お示しし学会員の方々ご意見を求めたいと存じます。ご意見は2013419日(金)までに学会事務局jde07707@nifty.comまでお願い致します。

 

1.              日本精神神経学会の精神科病名検討連絡会での議論により,「disorders」の「s」は「群」と訳すと取り決めましたのでそれに従いました。

2.              depressive disorderなどは精神科病名検討連絡会での検討に任せたいと思いますので翻訳案は記載しておりません。

3.              今回の委員会案ではこれまで批判の多かった「disorder」の訳である「障害」を使用せず,「症」として統一しました。

4.              D 00 Disruptive Mood Dysregulation DisorderDMDD)の日本語訳について,直訳は従来のDSMに従えば、破壊的気分失調障害、破壊的気分調節障害、破壊的気分調節不全障害が疾患名になると考えられます。しかしながら、DMDDという診断概念が形成された歴史的背景を考えますと,「破壊的」と日本語訳した際に偏った意味となってしまう懸念があります。「disruptive」についてnative speakerにニュアンスを尋ねますと,日本人が考えている破壊的だけではなく,低い水準の問題行動も含まれた概念のようです。また「disruptive」には有害という意味もあり、「disruptiveな程度」ということで「重篤」,「重症」というニュアンスの言葉を選択するのがよいと考えました。元々のDMDDの概念がsevere mood dysregulation からきている点も加味して,意訳して今回の訳を提案させて頂きました。

5.              同様にDisruptive, Impulse Control, and Conduct Disordersについても「Disruptive」は「重篤な」とし,「Conduct」は従来の日本語訳を踏襲し「素行」としました。

6.              A05 Autism Spectrum Disorder「自閉(性)スペクトラム症」も一案ですが,「自閉症スペクトラム」とします。

7.              Gender Dysphoria(性別不快症)についてはGID(性同一性障害)学会から性別違和が適切ではないかと異論が出ており議論される予定です。

8.              Obsessive-Compulsive and Related DisordersAnxiety Disordersに含まれる疾患に関しては不安障害学会でも病名に関して議論されています。

9.              Posttraumatic Stress Disorder in Preschool Children (就学前の子どもの外傷後ストレス症)については日本PTSD学会より歴史的な背景から外傷後ストレス障害と「障害」を残したいと異論が出ており議論される予定です。

10.       Nightmare Disorder 悪夢症に関しては睡眠学会から悪夢障害との病名が提案されており議論される予定です。

 以上が委員会立ち上げの経緯と翻訳案の解説です。

 翻訳案(PDF)

 会員の皆様からのご意見を求めます。

 期限は2013年4月19日(金)とさせて頂きます。